ここでは未収金を撲滅できない理由と未収金にならないようにするために医療事務職員がどう対応すればよいのかの対応事例についても考えてみましょう。
未収金を撲滅できない理由は?
医療機関の役割として、「患者より診察治療の求めがあった場合、診療に従事している医師は、正当な理由がない限り、この求めを拒否してはならない」ということが医師法の第19条で規定されています。
以上の法的根拠から、患者が貧困により診療費が払えない場合でも、そのことを理由に医師が診療を拒否することは原則としてできません。
なので、このような現実問題がある限りは、未収金を完全に撲滅することは事実上不可能と言えるでしょう。
但し、医療機関での医業経営を正常に行うため最小限に未収金を押さえるには、医療事務職員も未収金に対する正確な知識と適切な対応方法を身に付けるために、事例から学び訓練しておくことも重要な課題だと言えます。
未収金発生 事例1
医療事務の対応例
交通事故を起こし救急車で深夜1時に来院し、診察後、投薬とCTを行いました。
夜間担当した医療事務職員は、会計の際に患者が急なことでお金を持参していないということだったので、次回来院した際に支払ってもらうよう申し伝えて帰ってもらいました。
対応方法の問題点は?
今回の事例の場合、この対応方法には特に問題はありません。
次にその理由を説明します。
まず、交通事故の場合は、自賠責保険が適用され、後で保険会社から診療費を徴収することができます。
来院は救急車で搬送されているので、必ず警察に届出が行われており、患者の住所確認ができる可能性が高いと考えられます。
交通事故を起こした場合は、事故証明をしてもらうために事故届けを警察に提出します。
自賠責保険を適用するためには保険会社に事故証明に基づいて連絡を入れますが、この際、診断書を必ず提出する必要があります。
なので、今回のような事例では、病院側は診断書を発行せずに患者に帰宅してもらい、次回、診療費を精算してから診断書を発行するようにしておけば、患者は必ず1回は来院せざるを得ません。
以上のように、来院時の状況に合わせて医療事務職員も対応方法を考える必要があります。
夜間対応について以前は、診療費について精通していない警備担当が当直しているところも多くありました。
しかし、未収金については、一向に問題が解決されないことから、夜間であっても医療保険制度や診療報酬をよく理解し専門としている医療事務職員に担当させる医療機関が多くなっています。
これは、未収金を防止するための対策の一環として、医療機関での医療事務職員の重要性が今後も高まっていくことの実例と言えるでしょう。