患者サービス・診療報酬請求以外の仕事とは
医療事務の仕事は、患者に対する各種サービス業務、診療報酬請求業務などが主になりますが、これ以外にもいくつかの責任ある仕事があります。
患者以外からの電話応対業務
医療機関では、通院して診療を受けている患者や入院治療している患者の家族から電話で相談や問い合わせがあることもあり、この場合、病院側の担当者を呼び出したり、入院患者に電話を回したりするのは医療事務が担当する業務になっています。
また、製薬会社、外部の業者、関連する専門職種やスタッフ、医師が関わっている学会関係者など、いろいろな団体や個人から電話があるので、一般的なビジネスマナーは当然知っておく必要があり、状況に合わせて臨機応変に対応することが求められます。
保健所長への病院報告
厚生労働省が集計分析を行い医療統計を作成するための元データとして、 医療法では、毎月5日を期日として病院などの医療機関が病院報告を保健所長宛に提出することが法的に定められています。
この病院報告には次の2種類の書類を提出する必要がありますが、この業務も医療事務が担当します。
- 患者票には、外来患者数、新規・在院・退院の患者数を記載します。
- 従事者票には、医療機関に従事している医師、歯科医師、薬剤師、看護師などの職員数を記載します。
保険会社との交渉
救急病院には交通事故などを起こして怪我や障害を負った患者が急遽搬送されることがあります。
このような状態の患者を受け入れ診療を施す場合、医療機関の中には、必要となる診療行為に関する書類を集め、保険会社に対して医療事務が交渉を行うケースもあります。
未収金リストの作成・督促
ほとんどの医療機関では、医業経営収入のうち、保険診療収入が大半を占めています。
保険診療収入は、市町村などの保険者から給付される診療報酬と、被保険者である患者の自己負担金の2つで成り立っています。
この中の患者自己負担金については、様々な理由によって支払いが行われず、滞納するケースがどの病院でも発生しており、この状態を未収金と呼びます。
なので、安定した病院経営を行うためには、未収金回収は必ず行う必要があり、医療事務にとっても未収金管理は重要な業務の一つになります。
未収金の回収業務は、まず未収金リストを作成し、滞納者に督促して回収を行うという手順で実行し進捗状況を随時チェックしていきます。
未収金リストの作成
現在、多くの医療機関では、レセプトコンピュータの普及により、診療費の収納状況が把握できるようになっているので、未収金リストは自動で作成することも可能です。
未収金の督促
文書通知、電話連絡、自宅訪問、法的措置、保険者への処分請求など、未収金の督促方法は数通りの手段があります。
医療費の滞納者へ督促した後は、未収金リストに、督促日時、督促方法、督促回数などの情報も記載し管理します。
未収金の回収
原則、時効は3年で、地方公共団体設立の医療機関は5年と定められているので、回収は時効期限内に行う必要があります。
もし、未収金を時効期間内に全額回収できなかった場合は、医療機関の不良債権扱いとして経理処理する羽目になってしまうので、未収金の額が多いほど病院経営に大きな悪影響が及びます。
なので、未収金の督促及び回収は医業経営に直結する医療事務の大切な仕事です。
レントゲンフィルムの整理・管理
一般的には、病棟でレントゲンフィルムを保管管理している医療機関が大半です。
よって、病棟クラークとして入職した医療事務は、レントゲンフィルムの管理も一業務として担当します。
入院患者の病状や体調が急変し悪化するなどの緊急時には、医師はレントゲンフィルムが必要になりますが、患者の生命に影響する場合もあるので、いつでも迅速に検索し医師に渡せるよう医療事務は普段から表示標識、整理整頓を心がけておくことが大切です。
統計資料のデータ分析・作成
医業経営上で必要な数字を統計資料として作成しデータ把握することは、病院の経営状態を的確に判断するためには不可欠で、病院経営に関わる重要な資料になります。
収支状況や患者数を表やグラフで表し数値を一目で把握できる統計資料は、医療事務の業務でも重要な仕事の一つです。
また主な統計資料には次のようなものがあります。
- 収益統計とは、診療行為ごとに入院収入や外来収入に分類し、患者一人の平均診療金額を算出したデータのことを言います。
- 収益費用統計とは、医業経営での支出金額が医業収入全体の内で占めている割合を算出したデータのことを言います。
注目を浴びている医療事務関連の統計業務専門職とは
規模の大きい医療機関では、統計業務の専門職として人材採用し配置しているところもあり、統計業務の専門資格としては、診療情報管理士、診療録管理士、病歴士が有名です。
また、この仕事をするには、各種記録書類の過誤を的確に見つけれる洞察力や注意深さ、カルテを読み解く知識や技量、データ分析や統計に関する高い専門知識が求められます。
対人関係では、医療専門職やスタッフと円滑にコミュニケーションを取れる力量も必要です。
個人のスキル次第では医療分野のコンサルタントとして仕事を行うことも決して不可能ではありません。