医療事務は、生活保護受給者の患者が受診した場合も適切に診療報酬請求事務を行えるようにしておく必要があります。
このページでは生活保護法における医療扶助とはどのような制度・仕組みになっているのか説明していきます。
医療扶助の適用範囲はどこまでか?
生活保護法の医療扶助に基づく医療給付の方法は、次の2通りがあります。
- 生活保護の被保険者を都道府県知事が認可した医療保護施設へ委託し医療給付する。
- 政令指定都市市長・都道府県知事又は厚生労働大臣が指定した医療機関が医療給付する。
上記の市長・知事・厚労大臣により指定された医療機関を「指定医療機関」と言い、生活保護法の指定医療機関医療担当規定に従い業務を行うことが義務付けられています。
また、各福祉事務所が指定申請事務の受付窓口となっています。
指定医療機関が生活保護を受けている患者を診療する場合は、次の点に留意する必要があります。
- 原則として医療扶助は遡って過去の事例まで効力が及ぶことがないため、医療要否意見書は迅速に提出してもらう必要があります。
- 医療要否意見書の記載内容については、指定医療機関は記入を行った後は、迅速に福祉事務所等へ提出する必要があります。
- 医療券に基づいて受給資格の確認を実施する必要があります。
- 歴月単位で医療券は発行されるため、明記されている有効期限は確認する必要があります。
生活保護法の医療扶助の範囲は、次の通りで健康保険法での療養に関する給付内容や療養費の範囲と同様です。
- 診察
- 治療に使用された材料や薬剤
- 医学的な処置、手術、治療、施術
- 病院や診療所など医療機関への入院と、療養に関する世話や看護
- 居宅での療養上の管理と、療養に関する世話や看護
- 移送
- その他、人工肛門受便器や眼鏡
診療報酬の請求はどのように行うのか?
医療扶助による診療を指定医療機関が実施した場合は、次の手順で診療報酬請求を行います。
- 診療報酬明細書と医療券(福祉事務所が発行)などを確認する。
- 診療報酬明細書に医療券より必要事項を転記する。
- 診療報酬請求内容を記入する。
- 診療報酬請求書を福祉事務所別にまとめて提出書類に添付し、支払基金宛に提出する。
診療報酬明細書の作成手順は、健康保険法や生活保護法単独(公費負担単独)の場合に記入する作業方法と全部同じです。
但し、結核予防法、医療保険法、その他法律と併用するケースでは、診療報酬明細書の記入方法が部分的に違うので要注意です。
医療保険との併用の場合は?
医療扶助は、医療保険の被保険者の家族(被扶養者)が自己負担した費用についても給付される場合があります。
この場合に使用する診療報酬明細書は、福祉事務所が発行した書類を用い、医療券に記載された基本内容を確認します。
診療内容を記載する際、医療扶助分である公費負担分の点数記入欄が設けられていますが、医療保険点数と公費負担分点数とが同じ点数の時は、この公費負担分の点数記入は不要です。

株式会社ジーシー「生活保護法による医療扶助・介護扶助」より
http://www.gcdental.co.jp/member/hoken/chap02/contents0208_12.html