社会や医療機関が置かれている医療業界の環境変化により医療事務に対する期待値は、年々大きくなる一方で、より高度な専門技能、業務の外注化など、医療機関ではいろいろな変化が起こっています。
ここでは、今後医療事務としてどのようなことに注目し期待に答えられるよう備えていけばいいのかについて考えていきたいと思います。
医療費の増大と医療保険制度の複雑化により医療事務に求められること
医療費の財政負担の増加と仕事量は比例
現在日本は4人に1人が65歳以上の超高齢社会に突入しており、晩婚化による出生率の低下、少子化で高齢者比率が上昇し続けています。
このような状況であれば、高齢による老化や病気の発症率も高くなり、患者数も多くなるのは当然の事と言えるでしょう。
また、75歳以上の後期高齢者医療制度の対象者も増加するため、会計窓口で患者の自己負担額を請求することよりも、はるかに多額の診療費を保険者に請求することの方が多くなってきます。
よって、医業経営の収益に直結する業務の割合が大きくなるので、医療事務には迅速で正確なレセプト作成の技能が求められます。
医療機関の要として診療報酬請求業務を担う医療事務職員には、今後もますます期待が高まることが想定できます。
混合診療など医療保険制度が複雑化
混合診療については、以前から専門家の間でも問題点などを含めいろいろと議論されてきた課題でしたが、遂に2016年4月から「患者申出療養」という制度がスタートしています。
患者申出療養と聞いても混合診療と結びつかないと思いますが、正に混合診療の導入のことで、医療保険制度の抜本的改正とも言えます。
混合診療は、公的医療保険制度が適用される診療と、適用されない自由診療を並行して受けれる治療方法のことを言います。
以前は、禁止されていた治療方法ですが、混合診療の場合の患者の自己負担額は、公的医療保険適用分の3割負担にプラスして、保険適用外の自由診療の全額分となります。
このような現状に伴い、今後、医療事務の診療報酬業務が複雑になることが予想され、業務の手間がかかり今までより負担が大きくなるので、より迅速で間違いなく業務対応していくことが求められることになります。
アウトソーシングが増え外部委託業務が活性化していく
高齢者の増加による医療費の増大や、混合診療の導入による医療保険制度の複雑化により、医療機関は収益を確保し医業経営を安定化するために業務の効率化や、経営的合理化を図る必要に迫られています。
その具体的対応策の一環として、医療事務業務の中でも仕事量も多くネックになるレセプト業務を外注化する医療機関が多くなっています。
なので、医療事務の業務委託業、代行業、派遣業などの会社ではレセプト業務を任せられる人材確保に向けた流れが起こっています。
レセプト業務を行う職場は医療機関になりますが、直接雇用の正社員ではないので、勤務形態については、可能な時間帯や曜日を選択し仕事ができるなど、今まで以上に働き方が多様化しています。
また、派遣業者の中には、医療機関へ出向きレセプト業務について指導教育できるスキルを持った人材を派遣するところもあります。
なので、医療事務の経験を積み重ね専門スキルを身に付けていれば、その道のエキスパートになることも可能で、活躍できる機会も大きく広がることになるでしょう。
業務細分化による専門性の向上が望まれる
患者サービス向上のため、広く浅くではなく業務を細分化して専門性を高めることにより行き届いたサービス提供につなげようとする医療機関も増えていく傾向にあります。
また、診療報酬請求先の保険者である健康保険組合や地方自治体の市町村では、受け取ったレセプト内容に間違いがないか点検・審査することが必要なため、レセプト点検をしっかり行える技量を有した医療事務人材の必要性が高まっています。
経営改善に繋がる統計業務を行える人材も要望されている
病院の経営状況を把握・管理するために、医療機関では医事課で収集される収益データなどを整理・分析したり、病床の稼働状況、診療や入院患者数の推移などのデータを分析し統計資料を作成するなどの作業が行われています。
このような作業は統計業務と呼ばれている仕事になり、様々なデータより分析した結果を基にして、収益性や顧客サービスの改善などに活用していく医療機関も増えています。
よって、レセプト業務だけでなく統計業務の知識を持った医療事務職員を求める医療機関もあるので、通常の医療事務の知識や技能を習得すると同時に、診療情報管理士などの資格を取得し、統計学やデータ分析のスキルも身に付けておくことで、より活躍の幅を広げることが可能になります。