医療事務の仕事や医療業界の今後起こり得る変化
医療業界は、今後も時代のニーズや社会・業界の変化に伴い医療機関の形態が大きく変化していくものと予想され、医療機関の再編や役割分担の明確化に繋がっていくことが考えられます。
具体的には、次のような変化が予想されますが、以下に示したこと以外にも様々な課題が表面化しており、医療事務の仕事の重要性は今後も増していくものと思われます。
このような形態変化から想定すると医療事務の業務内容にも大きな影響があります。
- 診断群別包括請求制度の拡大
- 診療報酬の改定
- 診療情報管理の活用
- 医療クラークの需要拡大
- 医療保険と介護保険の給付範囲の区分け
- 電子カルテの導入・普及
- レセプトコンピュータの導入・普及
- 医療関連法規の改正
診断群別包括請求制度(DPC)の導入拡大
最近では医療機関でDPCを導入する動きも拡大しており、包括算定が増えることから出来高算定が少なくなっていくことが予想され、現在行われているレセプト点検の仕方やその業務範囲にも影響があると考えられます。
診断群別包括請求制度の導入については、規模の大きい医療機関が採用しているケースが多く、レセプト内容の点検業務自体が行われなくなる可能性も考えられます。
今後も診療費の包括算定にシフトしていく流れがますます強くなっていくことは、医療業界の様々な状況から見ても不可避だと思われます。
ですが、出来高算定がすぐになくなることは考えにくく、当分の間は出来高算定と包括算定が併用されていく状況が向こう何年間は続いていくものと予想され、レセプト点検業務の知識については業務上必要となるため、医療事務としては理解しておくべきです。
診療報酬の請求方法が変更されても、学んだ知識や技能は活かすことが可能で決して無駄にはならず、質の高い医療事務を目指すためには必要となります。
診療報酬の改定
医療費の財政出費を抑制するため診療報酬の改定も2年ごとに実施されており、改定内容によっては医療機関の事業形態を見直したり売却・合併などのM&Aによる業界再編が活発化することも考えられます。
大幅な改定が行われれば、医業経営にも影響するため、医療事務業務の知識だけにとどまらず医業経営に関する知識を有する医療事務のニーズが今後高まっていくことも予想されます。
診療情報管理のニーズ増大
2000年の診療報酬改定では新たに診療録管理体制加算が設けられ、最近では個人情報保護法がスタートしたり、医療事故に係わる争いも増えています。
特に診療を受けた患者の個人情報や病歴など入手した情報については厳格な情報管理が必要ですが、これは医療機関として当然のことで、医療機関の組織として情報管理の体制を確立する努力が求められます。
医療機関に従事する全スタッフが、診療情報管理の重要度を意識しながら業務を行うのは当たり前のことですが、職員の中でも特に診療情報管理士の有資格者は大きな役割と責任を担っています。
より高度なスキルと牽引役を求められ、診療情報管理の業務に従事する人材ニーズも高まり重要性も増してくるものと考えられます。
医療クラークのニーズ拡大
2008年度(平成20年4月)に診療報酬改定が実施され、医療クラーク制度(医師事務作業補助体制加算)が導入され医療機関で点数加算できるようになりました。
欧米では以前から導入されていた医療クラーク制度ですが、日本では医師事務作業補助業務と呼ばれています。
近年の日本社会では年々高齢者が増加し続けており、それに伴い患者も増え続けているため、医師が本来業務である診療行為に集中して多くの時間を割り当てられるよう、従来医師が行ってきた事務作業を医師事務作業補助者の資格認定者が代行しサポートできるようにと設けられた制度です。
このような診療報酬改定が行われ新しい制度がスタートしたことから医療事務としての職域は大きく広がっています。
今では医師事務作業補助者認定資格を取得するため、法的に定められた教育基準を満たした資格講座も多く開催されています。
より質の高いスキルが医療事務には求められる時代に
質の高いスキルとは、従来の医療関連法規や点数算定に関する診療報酬制度に加えて医業経営や医学的知識などの専門的で幅広い知識や技能を習得することを指します。
これらの中でも医学的な知識が特に重要になり、解剖学や生理学、講座で学ぶ従来の知識に加えて病気や治療に関する知識が医療事務に求められるようになると考えられます。
現在、現役で医療事務職員として既に働いている方も、今後も変動していく医療業界で長く活躍するためには、幅広い専門的スキルを身に付け、臨機応変に対応できるように備えておくべきです。
社会情勢の変化に伴い医療業界の状況も大きく変化していくことになりますが、高い能力や確かな実力を身に付けていれば、活躍するチャンスは大きく広がると言えるでしょう。
また、職務範囲や業務で担う役割は変化する可能性はありますが、質の高い医療事務職員を目指すことで、職場でも責任ある立場を任され収入アップも期待でき、生活を安定させることに繋げることができます。
将来的に大きな医療制度改革や診療報酬改定が行われれば、医療業界と共に医療事務業務も大きく変動していく可能性があります。