感染症の分類・種類・指定医療機関での療報酬請求方法|医療事務の知識

感染症予防・医療法は、患者の人権を守り、感染症の未然予防とまん延を防ぐための対策をトータル的に・計画性をもって行えるようにするために制定された法律になります。

このページでは、医療事務として理解しておくべき感染症の区分と対象となる疾病の種類について解説していきます。

感染症予防・医療法とは何か?

自然環境として水分、土壌、大気、動植物などが存在しますが、その環境には様々な病原体が生存しています。

ウイルス、細菌、寄生虫、カビなどは、感染症を発症させる原因となる病原体で、それらの病原体が人体に入り込むことで発症する疾患を感染症と呼びます。

感染症予防・医療法(感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する法律)の目的は次の2点です。

  1. 感染症を発症した患者の人権を保護する。
  2. 感染症の予防及びまん延を防ぐための対応策を総合的観点に基づき計画性を担保して実施する。

1999年4月より感染症が発生した場合に、より的確・迅速に対処できるようにするため、伝染病予防法、性病予防法、エイズ予防法が廃止され、その3つの法律を一本化して施行されることになりました。

感染症の分類と種類について

感染症予防・医療法において令和3年3月3日改正の感染症法における分類一覧では、感染症は次の8つに区分されており、それぞれの分類においても疾病名が指定されています。

  1. 一類感染症
  2. 二類感染症
  3. 三類感染症
  4. 四類感染症
  5. 五類感染症
  6. 新型インフルエンザ等感染症
  7. 新感染症
  8. 指定感染症

疑似症患者の法的扱い

1類感染症の疑似症患者は1類感染症の患者とみなされ、2類感染症の中で政令で規定される疑似症患者は、2類感染症の患者とみなされて感染症予防・医療法に基づいた適用対象となります。

疑似症患者とは、病気の症状はあるが病原体による正式な診断が行われていない者を指します。

無症状病原体保有者の法的扱い

1類感染症の無症状病原体保有者は、1類感染症の患者とみなされ、新型インフルエンザ等感染症の無症状病原体保有者は、新型インフルエンザ等感染症の患者とみなされて、感染症予防・医療法に基づいた適用対象となります。

無症状病原体保有者とは、感染症の病原体は体内に保有しているが、感染症の症状が発現していない人を指します。

感染症の分類と病気の種類一覧
感染症法における分類一覧
上記分類一覧表の引用元:
京都市情報館「感染症法における分類一覧(令和3年3月3日改正)」による

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下は感染症予防・医療法という)では、感染症を類型し、それぞれの感染症に対し適切に医療を施せるよう感染症指定医療機関を指定しています。

このページでは、医療事務として理解しておくべき感染症指定医療機関の種類と、感染症予防・医療法に基づく医療費負担制度に関して解説していきます。

感染症指定医療機関とは何か?

感染症予防・医療法では、感染症を分類し区分すると同時に、患者を受け入れ適切な医療行為を施せる医療機関を指定しており、感染症指定医療機関と呼びます。

感染症指定医療機関には、厚生労働大臣が指定する特定感染症指定医療機関、都道府県知事が指定する第1種感染症指定医療機関と第2種感染症指定医療機関があります。

また、指定医療機関には義務があり、感染症指定医療機関療養担当規程を厳守・遵守する必要があります。

感染症患者への医療対応は、患者への的確・適切な診療行為と感染症蔓延防止が重要な目標であり、決して地域社会から患者を隔離するのが目的ではありません。

さらに、法律に準じた感染症患者の入院の勧告・措置に関する医療行為を不当な理由で拒否することはできません。

法律に従い患者を受け入れ的確に診察し適切な治療を施す必要があります。

感染症指定医療機関と医療の役割

感染症指定医療機関の種類とその役割、指定権者、対応が義務付けられている感染症の類型、患者に対する主な対応方法、医療事務担当者が理解しておくべき医療費負担の割合などについて下表にまとめてみました。

医療機関名 役割 指定権者 対応すべき
感染症類型
主な対応 医療費負担
特定感染症
指定医療機関
対応すべき感染症類型の患者の入院を担当できる医療機関。 厚生労働
大臣
新感染症の所見がある患者、
一類感染症、
二類感染症、
新型インフルエンザ
入院 全額公費負担
(医療保険の適用なし)
第1種感染症
指定医療機関
都道府県
知事
一類感染症、
二類感染症、
新型インフルエンザ
入院 医療保険適用残額は公費負担
(入院について)
第2種感染症
指定医療機関
都道府県
知事
二類感染症、
新型インフルエンザ
入院
結核
指定医療機関
結核患者の通院医療、公費負担医療を担当できる医療機関。 都道府県
知事
結核 特定業務への就業制限 95%は患者加入医療保険と公費で負担、残5%は自己負担
一般
保険医療機関
3〜5類感染症患者への診療を担当できる医療機関。 厚生労働
大臣
三類感染症 特定業務への就業制限 医療保険適用
(自己負担あり)
四類感染症 消毒等の対物措置
五類感染症 発生動向の把握・提供

感染症患者の医療費に関する診療報酬請求の方法は?

上記一覧表で記載しているように、特定感染症指定医療機関では、新感染症の所見がある患者、1類及び2類の感染症患者への入院に関する医療を行います。

第1種感染症指定医療機関では、1類及び2類感染症患者への入院に関する医療を、第2種感染症指定医療機関では、2類感染症患者への入院に関する医療を行います。

この3つの医療機関で提供する医療は、感染症指定医療機関療養担当規定(厚生労働大臣が規定)に基づいて実施されます。

またこの3つの医療機関で提供された医療費に関しては、新感染症に要した医療費は全額公費負担となり、1類・2類感染症に要した医療費は医療保険が優先され、残額に関してのみ公費負担となります。

感染症患者が入院し要した医療費の公費負担を受けるには、患者の住民票が登録されている地域管轄の保健所長を通じて、患者自身又は患者の家族が都道府県知事宛に申請する必要が有ります。

3類・4類・5類感染症患者に関しては、感染症指定医療機関ではなく、一般医療機関で診察・治療を受けることで保険診療が適用されます。

原則として通院治療の場合は公費負担は適用されず、各種健康保険と同じ医療費負担割合となります。

感染症患者の医療費の診療報酬算定は、一般的な各種健康保険と同じ方法で算出し、社会保険診療報酬支払基金などで診療報酬請求・審査・支払いに関しての業務が実施されます。

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