ここでは、医療事務の知識として医療保険制度の労災保険、自賠責保険について解説します。
労働者災害補償保険(労災保険)について
労働者災害補償保険(労災保険)は、労働者が病気などにより治療・障害・休業・死亡したり、通勤途上や業務上で負傷した場合の給付内容について規定された法律です。
労災保険が適用されるのは、労働者を雇用している事業所が対象となりますが、官公署、国が直営する事業、船員保険の被保険者は該当しません。
また、正職員だけでなく、人材派遣職員、パート・アルバイト職員、自営業者、特別加入制度による1人親方も労災保険の対象者に該当します。
労災保険における保険者は、国(政府)になります。
このように、労災保険は、障害補償、療養補償、休業補償、遺族補償等の給付を、労働者の業務上又は通勤上での負傷・災害が発生した場合に行うための保険ですが、医療保険の対象とはなりません。
ただし、労災保険の適用外となった通勤途上での負傷・災害については、医療保険の給付の対象となります。
自動車損害賠償補障法(自賠責)について
自動車保険は、車による人身事故などの損害を補償するための保険です。
自動車保険には、次の2種類がありますが、すべての自動車に対して強制的に保険加入することを自動車損害賠償法では義務づけています。
- 強制保険(自賠責保険)…自動車を購入した場合に強制的に加入させられ自動車損害賠償責任保険。
- 任意保険…任意で契約する民間の自動車損害賠償責任保険。
一般的には、交通事故が発生すると加害者が自ら加入している自動車保険を使って負傷者に対して治療費を支払うことになりますが、実施は保険金が支払われるまでに時間がかかります。
直接加害者に対して医療機関が治療費を請求する権利はありませんので、原則として、交通事故であっても医療機関としては、患者本人に治療費を請求します。
自動車事故の被害者に対して、加害者が負う損害賠償責任のうち、強制保険で最低限のものを充当するということが自賠責保険の役割になります。
自賠責保険の支払い限度額は、死亡事故が起こった場合は3000万円が、障害事故の場合は120万円が上限額になっています。
このように、 自賠責保険は、通院費・入院費・看護費などの治療費、休業補償費、後遺症害補償費、遺族の慰謝料及び葬祭費などの給付を、自動車事故などにより、被害者が死亡したり、身体に障害を負ったりした場合に受けるための損害賠償を定めた補償制度です。