ここでは医療事務が行う診療報酬明細書(レセプト)の内容点検について確認していきます。
次のような診療が行われたと仮定し、レセプトの記載内容に問題がないかをチェックしていきます。
病名の記載漏れに関するレセプト内容点検の具体事例
60歳の男性が胸の痛みをおぼえ診療を受けに病院を訪れました。
心電図検査を行うよう医師は指示しましたが、これは狭心症の疑いがあると判断したからです。
しかし、検査結果を確認すると問題は発見されませんでした。
その結果、カルテ病名欄には狭心症の疑いと記入されています。
処方薬は14日分のアダラートL錠(20mg/錠)2錠を処方しましたが、これは血圧測定を行った際に血圧が若干高めであった為です。
今回事例の確認ポイントは、病名と投薬及び検査内容になります。
なお、薬価基準に於いて薬は次のように定められており、医師の診療内容を再度整理すると次のようになります。以上のことを踏まえ、まず最初に検査内容の点検を行っていきます。
心電図検査は、患者の体の表面上より収縮及び興奮時に発生する心筋細胞の電気的な活動状態を記録して、苦痛を感じさせることなく検査を行えるので生体検査ではよく用いられています。
心電図検査では次のような項目について調査することが可能です。
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 心筋症
- 心臓病投与薬剤の副作用や薬の有効性
- 心臓肥大(高血圧を伴うもの)
- 不整脈
また、病気を調査する目的で検査は実施されるため、注射や投薬とは違い病名がはっきりと確定していないような診断結果であっても行うことが許されています。
よって、検査内容については、狭心症の疑いがあるということで実施されているので、保険診療上での問題はありません。
次に病名について点検を行っていきます。
結論から言うと、疑い病名では薬を投与することはできず、レセプトには確定病名の記載が必要になります。
心電図検査は狭心症の疑いで実施していますが、検査後の結果では異常は確認できず、狭心症の疑いと記載されたままですが、実際は狭心症ではなかったという事になります。
高血圧・狭心症治療剤としてアダラートL錠が投薬されていますが、カルテの病名が狭心症の疑いでは適応されません。
心電図検査の他には、血圧測定が行われており、高血圧症が本当の病名と思われます。
よって、今回のカルテの場合、病名の記載漏れと考えられますが、医療事務職員がこの事を見逃してレセプトを提出した場合、診療報酬は支払われない可能があります。
以上のことから診療点数以外にも医学的な基本知識の理解が必要になります。
薬剤は内服・外用薬・注射薬・麻酔薬など多くの種類があり医療機関で使用されているので、医療事務職員は薬剤の基本的な知識も理解しておくべきです。
この他にも、医療機関の診療科は多岐にわたり、検査から手術までの医療行為も異なります。
有能な医療事務職員として認められるには、このような内容についてのスキルも身に付けておく必要があり、定期的に改定が行われる診療報酬点数制度についても情報収集を怠らず技量の向上を図っていく努力が求められます。