2008年4月から高齢者医療確保法に基づく長寿医療制度(後期高齢者医療制度)が施行されましたが、ここでは医療事務の知識としてその内容をみていきましょう。
長寿医療制度とは
高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)という法律が施行されましたが、それまでは老人保健制度が高齢者医療を担っていました。
現在の日本は世界一の長寿国であり、高齢者の増大により医療費は増加する一方です。
今日に至るまでの医療保険制度ではいずれ限界を迎えることになるだろうという危機感から、今後も継続して国民皆保険(医療保険への全国民加入制度)を維持し、長年に渡って社会経済発展のために尽力してきた高齢者に十分な医療サービスを提供し続けられるようにするため、長期間に及ぶ議論を受けて、若年層も併せて全国民が受け容れて助け合う長寿医療制度が採用されました。
高齢者が長年居住してきた地域で普段通り安心して生活を送れるよう支援していくために、長寿医療制度では下記項目に重点をおいて運営されています。
- 色々な選択肢があり細かな所まで行き届いた訪問医療を提供する。
- 突然に病気の状態が悪くなった際でも、高齢者の病気の状況を良く把握している医療機関に入院が可能である。
- 介護分野とも協力し合いながら、入院時や退院後も手厚い医療・福祉の支援を享受できる。
- 以上のような医療サポートを高齢者が選択した高齢者担当医が絶え間なくフォローアップする。
長寿医療制度の運営の仕組は?
公費負担以外の拠出金という名目で保険料が充当され老人保健制度での老人医療費の財源となっていました。
そのために医療費をどれだけ高齢者本人が負担しているのかが明確になっていませんでした。
また、保険者が費用の実負担を行っていましたが市町村が運営母体となっており、財政運営の責任所在が明確になっていませんでした。
高齢化が年々増長し財政負担が重くのしかかる現状に対処すべく、保険加入者の高齢化や窓□業務における負担増大を改善するために新たな制度改正が行われました。
老人保健法による老人医療と長寿医療制度との大きな相違点は次の通りです。
- 老人保健法による老人医療:
老人保健法以外の健康保険などに加入し被保険者資格を保持した状態で老人医療の適用を行っていた。 - 後期高齢者医療:
以前加入者であった健康保険・国民健康健保を脱退させ75歳以上を保険適用対象者として独立した保険制度とした。
長寿医療制度の財源構成は?
長寿医療制度の財源構成は、少子高齢化を見越して次のような負担配分となっています。
- 1割負担:高齢者個人の保険料納付
- 4割負担:現役世代負担金
- 5割負担:国の公費負担
後期高齢者医療制度広域連合(広域連合)が各都道府県別に1拠点設けられ運営主体となり実施することになっています。
都道府県別に同じ規定の基で75歳以上の高齢者個々が均一の保険料負担となっているので、社会保険被保険者の家族でも75歳以上になれば、保険料負担が課せられるルールになっています。
よって低所得者への経過措置が設けられており、所得割額と均等割額を合算した保険料体系となっているので、低所得世帯(基礎年金だけでの生活者等)には均等割額が減額されます。
保険料を長期滞納した場合は、医療費全額が一旦、患者自己負担となり資格証明書が発行されます。
75歳以上の者が保険医療機関で資格証明書を持って受診した場合は、診療にかかった医療費全額を現金で自己負担し医療機関から領収書を受け取ります。
その後、75歳以上の患者が保険料納付を行えば、後に特別療養費として本来の保険給付該当金額が患者に払い戻されます。
後期高齢者医療制度の加入者(被保険者)とは?
被用者保険や国民健康保険の被保険者資格を得たまま老人保健法に準じた医療給付を受給することが老人保健制度では可能でした。
後期高齢者の加入者(被保険者)となる条件は次の通りです。
- 広域連合の区域内に住民登録がある居住者で75歳以上になる者。
- 広域連合の区域内に住民登録がある65歳以上で、障害認定(資格取得者)され、尚且つ広域連合が認定した者。
後期高齢者医療制度の給付内容は?
現金給付(医療費支給)と現物給付(医療サービス提供)が後期高齢者医療制度の給付として提供されており、医療給付(療養の給付)内容には、次のようなものがあります。
- 高額療養費
- 高額介護合算療養費
- 入院時食事療養費
- 入院時生活療養費
- 療養費(医療費)
- 訪問看護療養費
- 特別療養費
- 保険外併用療養費
- 移送費
後期高齢者医療制度の給付制限は?
後期高齢者医療制度の給付制限には次のものが該当します。
- 故意による負傷・疾病
- 自己故意による疾病・負傷・犯罪行為
- 泥酔・争い事・悪質な不正行為による負傷・疾病
- 拘置所・刑務所やこれらに属する類の施設に収容・拘束された場合