初診料の算定方法
保険証を取り扱う医療機関である病院、診療所、調剤薬局などにおいては、請求業務は経営に関わる重要な業務です。
医療機関における収入は、一部負担金の算定とレセプト作成による請求とから成り立っています。
レセプト作成による請求業務は、診療報酬点数制度に基づき算定され、「点数」により全部の診療行為が規定されています。
原則1点を10円として算定します。
平成28年度の診療報酬点数(医科)の初診料は282点と定められているので、2820円の金額に算定されます。
患者さんが医療機関窓口で支払うお金を一部負担金といい、2820円の3割を負担することになり、846円を窓口で負担することになります。
「出来高算定」と「包括算定」について
以上のように診療行為を点数に置き換える方法を出来高算定といいます。
一方、包括算定と呼ばれるものもあり、医学管理等に一部の診療を包括したり、請求全体を包括的に請求する方法をいいます。
例えば、次のような状況の45歳男性が、診療を受けた場合下記のように算定されます。
- 高血圧症で一般病院(70床)の内科を再診で受診。
- 定期診察と14日分の薬を処方され日常生活に必要な指導を受けた。
- 薬を院内で処方してもらい服薬指導を受けた。
項目 |
出来高算定の場合 |
包括算定の場合 |
診察(基本診療料) | 109点=再診(57点)+外来管理加算(52点) | 再診(57点)+外来管理加算(52点)=109点 |
医学管理等 | 157点=特定疾患療養管理料(147点)+薬剤情報提供料(10点) | 生活習慣病管理料(1310点) |
投薬 | 171点=薬剤料(112点)+調剤料(9点)+処方料(42点)+調剤技術基本料(8点) | ― |
合計点数 | 437点=4370円 | 1419点=14190円 |
一部負担金 | 1311円=4370円の3割 | 4260円=14190円の3割 |
上記の診療費は包括算定の方が高いですが、全てがそうではなく、診療内容が同じでも、診療費は算定方法によって大きく異なることがあります。
診察料については、両方の算定結果は同じですが、医学管理等の項目は異なっています。
包括算定では「生活習慣病管理料」が算定されており、出来高算定に挙がっている医学管理等・投薬科の各項目は算定されていません。
規定では、「生活習慣病管理科」と、「医学管理等・投薬・注射・検査」を同時に算定することはできないことになってます。
ですから、投薬・注射・検査の実施回数が多ければ、包括算定より出来高算定の診療費の方が高くなるケースもありますし、同じ月には1回しか生活習慣病管理科は算定することができません。
診療点数は同じ月を一単位として算定する場合が多く、合計点数を1ヶ月分で比べた場合、出来高算定より包括算定の診療費の方が必ず高くなるとは限りません。
医師が医療行為について全責任を負っており、診療報酬算定におけるレセプト提出の際も医師の記名が必要です。
但し、医師の指示に基づき診療報酬請求業務も行なわれますが、実施された診療内容を点数に置き換える方法については、医療事務職員の裁量に任されるので、診療報酬制度の知識や技能をしっかりと習得しておくことが重要になります。
診療費を算定する場合は、各医療機関が「出来高算定」と「包括算定」のどちらで算定するかを都度決定するので、医療事務職員の役割は大変重要です。
実際、診療報酬の算定漏れの原因を探ってみると、医療事務職員の知識不足に起因する初歩的ミスも少なくありません。
なので、現役の医療事務職員やこれから目指す方も、医療事務の知識と技術を高める努力を絶え間なく継続していくことが大切になります。