医療事務の資格を取得後、病院や診療所などの医療機関で勤務することになりますが、医療事務の業務では医療未収金に対する対応が必要になります。
ここでは、医療未収金の背景、防止策、督促方法などについて詳しくみていくことにします。
医療未収金が発生する原因は何か?
近年、日本国民の所得格差が顕著になり社会問題化しつつありますが、医療サービス・介護サービス費も増加する一方で、これに伴い個人負担で賄われている健康保険や国民健康保険、国民年金などの負担額も年々増加し続けています。
これらの格差や負担額の増加により病院で治療を受けてもその費用を支払えまい方も多くなってきました。
その影響により医療機関における未収金が増え続け、減少する気配は一向に見えてきません。
医療機関で常に問題となっている未収金は、次のことが起因して発生することが考えられます。
- 格差による低所得者層の増加による未収金発生
- 自己負担金や一部負担金の増加による未収金発生
- 医療機関側の責任による未収金発生
- 診療報酬算定の間違いによる追加請求。
- 診療報酬算定の請求漏れによる追加請求。
- 救急・緊急で患者が受診したことにより一部負担額分の手持ち現金を持っていない。
- 特別・特殊な検査を行ったことにより手持ち現金が不足している。
- 第三者行為(交通事故等)が原因で患者が病気や傷を負ったため、医療費の支払当事者が決定していない。
健康保険の現物給付と同様の支払方法で高額療養費の支払いが2007度以降変更となるので、入院診療費の一部負担金に関する未収金発生は減少する可能性はあります。
ですが、未収金発生の原因が医療機関側にある場合には、深堀した原因追及と解明を行い、具体的な再発防止策・予防策を検討し、標準化した防止手順を作成し、未然防止に注力することが重要です。
また、診療報酬算定の請求漏れなどが、現状の作業手順では発生する可能性が高いと考えられる場合は、どこでミスが発生しやすいのか、その原因究明を的確に行い未然防止策を考えて予防処置を実施することが必要です。
医療未収金に対する督促方法とは?
本来なら患者各自別に未収金を把握して管理していれば、すぐに対応できるのですが、まだまだ多くの医療機関ではこのような管理体制ができていないのが実情です。
未収金管理簿や未収金管理台帳を作成し、「未収金額、対象患者名、発生日、督促方法、督促日、回収日などを記録し、督促状況を誰でも一目でわかるようにすぐに整備することが基本的な対策になります。
医療未収金の督促方法として実際には下記のような方法があるのですが、未収金の時効は3年となっているので、この期間内に回収できなければ医療機関の損失金となり経営を圧迫する原因になるため十分注意する必要があります。
- 口頭による督促:
患者が再診で医療受診をした際に、一部負担金の未払いがあることを直接本人に告げて督促を行います。 - 電話による督促:
一部負担金の未払いがあることを電話により何回も直接患者本人に告げて督促を行います。この方法は頻繁に行われている方法ですが何度も繰り返して電話し続けることが必要になります。
- 文書による催促:
内容証明郵便などの封書やハガキなどによる印刷文書を患者本人に送付し督促を行います。これらの文書内容としては、診察・治療を受けた通算の診療期間、受診した診療科名、入院・外来の診療形態、診療担当した医師名、一部負担金の未納理由、未収合計金額などを記載して督促します。
- 自宅訪問による督促:
直接患者の自宅を訪問し督促を行います。 - 法的手段による督促:
悪質な支払い拒否などであれば、少額訴訟制度などの法的手段に訴えて督促を行います。
少額訴訟制度とは何か?
60万円以下の金額の支払いを訴える法的手段を少額訴訟制度といい、支払い訴え金額に見合った少額費用と短期間で争いを解決できる方法になります。
迅速かつ簡易に争いを解決することを目的として制定された訴訟制度なので一般の訴訟とはプロセスやスピードが異なります。
各地域に設けられている簡易裁判所で裁判が実施され、裁判当日に審理を終了し判決を出すのが原則となっている訴訟制度です。