医事統計業務には、高い専門的知識も求められる
総合病院や大学病院など大規模な医療機関では、様々なデータを収集し統計資料を作成しています。
病院経営を行っていく上で、各種統計資料は適切で安定した経営を行うための大切な判断材料となる貴重なデータとなります。
実際に各医療機関では、統計資料を参考にして人材採用、設備投資、資金繰りなどを検討し事業計画を作成しています。
統計資料には日報や週・月・年単位で集計した統計データがあり、そこから必要な項目を抜き出し表やグラフなどを作成していきます。
この医事統計業務を行うには、医療事務の基礎知識、パソコン操作や表計算ソフト操作などのスキルが必要になります。
また、カルテ作成に関しても熟知し的確に記載内容を理解する技能、医療関連記録の間違いを見分ける注意力、データ分析や統計の高度な専門的スキルが必要になります。
病院は多くの専門職種が集まり協力して業務を進めていく職場であるため、対人関係においては、各種医療スタッフとも上手くコミュニケーションできる能力も求められます。
医事統計業務は、何の知識や技能も持たないまま誰もが出来る仕事ではないので、統計業務に関する知識や技能を習得するにあたっては、診療情報管理士、診療録管理士、病歴士などの資格を目指せるスクール・講座を受講するのが最も確実な方法です。
医療機関によっては、専門スタッフとして雇い入れている病院もあり、個人に能力があれば医療コンサルタントとして活躍することも可能な職種です。
主な医事統計業務の概要
医事統計業務には、主に次のようなものがあります。
外来患者数
外来患者数は、医師や各診療科別に外来受診した患者の初診数や再診数を日単位で集計を行います。
院長や理事長へは、1ヵ月間の累計数などを算出しデータ報告を行います。
入退院患者数
入退院患者数は、病棟や診療科ごとに患者の入院数、在院数、退院数を日単位で集計を行います。
これらの集計を行うと同時に病床稼働率や患者の在院平均日数なども算出します。
特に診療報酬点数を算出する際に、病床稼働率や患者の在院平均日数のデータが関係し結果に影響があるので、病院経営に関する大変重要なデータ資料にあたります。
病床稼働率
病床稼働率とは、医療機関に設置されている病床(ベッド)がどれだけ患者に使用され稼働しているかを数値で表したデータになり、稼働率が低いと病院の収入は減り医業経営の悪化に繋がります。
集計は月単位で、病室ごとに行い稼働率を算出します。
医療機関には、特別室といって室の利用料に差額が発生するものや、普通室といって差額が発生しないものがあるため、病室別にデータを出します。
診療科別患者数
診療科別患者数は、月単位で、外来患者数、入院患者数に分けて診療科別に集計しデータを出します。
このデータを確認することで、日々の平均患者数などを把握でき必要な対応策を迅速に取れるようになります。
診療科別診療報酬実績
診療科別診療報酬実績は、月単位で診療科別に入院診療報酬、外来診療報酬を算出します。
また、1日当たりの診療科別診療報酬平均額や患者の延べ人数などの数値も算出するのが原則です。
診療行為別診療報酬実績
診療行為別診療報酬実績は、診察、投薬、注射、処置、手術、医学管理など医療行為を行った診療区分別に1か月間の診療報酬の結果実績を表にして一覧で分かるようにデータ作成します。
受診者地域別比率
病院を受診している患者の住所から、どの地域に患者が多いか少ないかを統計分析し、そのデータを基に集患や増患、事業展開を検討します。
医療法改正に伴う広告規制緩和が2006年頃より進んでいるので、受診者地域別比率などのようなデータは、医業経営に大いに活用できることから重要性が高まると予想されます。
性別・年齢別・保険別集計
性別・年齢別・保険別集計は、病院を受診している患者の性別、年齢、加入保険に関して分析集計を行い、どのような社会的変化があるのかを読み取ります。
また、診療報酬制度改正も大きく内容が変化することから、安定した病院運営を行う上で、医療業界の構造変化や社会的ニーズの多様性などに対応するため、最善の経営スタイルを検討する際の貴重なデータとなります。