医療事務としては、主な医療保険制度である国民健康保険と社会保険については、十分理解しておく必要があります。
国民健康保険と社会保険の二つが日本の医療保険では主な保険制度になります。
国民健康保険は、会社員などで仕事をしていない地域住民や自営業・フリーランサーなどの人々が対象で、地域保険ともいい世間では国保と呼ばれています。
また、国民健康保険組合(国保組合)といって同業者が組織で運営している団体もあります。
各種保険により保険者が給付する割合である給付率は、若干ですが異なっています。
一方、社会保険は企業など会社の職場で働く従業員が対象で、職域保険ともいい世間では社保と呼ばれています。
国民健康保険制度についての基本知識
国民健康保険(各市町村)の被保険者とは
市区町村の国民健康保険の加入対象者は、社会保険の未加入者です。
飲食店や旅館などの自営業者、農業や漁業などの個人営業者などの地域住民が対象です。
国民健康保険組合とは
同じ職種の事業者が300人以上集まった場合で、市区町村の国民健康保険事業に支障が出ないケースに限り国民健康保険組合の設立が認められていましたが、最近では認可されるケースはほとんどありません。
今までは弁護士、税理士、医師、薬剤師、大工、左官業など同じ職種を単位として組合を設立し、運営されてきました。
社会保険の種類・制度についての基本知識
社会保険には次のような種類があります。法律 |
適用される保険 |
健康保険法 |
1.政府管掌健康保険
2.組合管掌健康保険 3.日雇特例被保険者の保険 |
船員保険法 | 4.船員保険 |
各種共済組合法 | 5.各種共済組合管掌保険 |
防衛庁職員給与法 | 6.自衛官等の療養の給付 |
政府管掌健康保険
対象者
- 従業員数が常時5人以上の個人事務所の雇用者とその家族
- 法人事業所は従業員数に関係なく適用され、その雇用者とその家族
保険者
政府になりますが、実務は各地域にある社会保険事務所又は地方社会保険事務局が保険事務業務を管轄しています。組合管掌健康保険
対象者
民間大規模事業所で従業員が常時700名以上の雇用者とその家族保険者
健康保険組合で保険事務も管轄しています。日雇特例被保険者の保険
対象者
一般事業所又は失業対策事業、公共事業などを行う事業所において次の人が対象になります。- 日雇いでの雇用者とその家族
- 2ヵ月以内の期間を定めて雇用される人とその家族
- 季節的業務に雇用される人とその家族
給付条件
保険料として一定期間に決まった額を支払わなければ医療給付を受けることはできません。
一般療養(法別番号03):
受診前1ヶ月に26口分以上、又は6ヶ月に78口分以上の保険料納入済みの者が給付対象となります。
特別療養費(法別番号04):
一般療養の条件に満たない者、被保険者手帳の交付を初めて受けた者が対象で、一定期間に限り給付対象となります。
保険者
政府ですが、地方社会保険事務局と社会保険庁長官指定の市町村役場が窓口として業務を行っています。船員保険
対象者
船舶職員が対象で、船員法第1条に定めるように船舶所有者に船員として雇用されている者が被保険者の対象です。
但し、次に該当する場合は対象に含まれません。- 総トン数5トン未満の船舶
- 湖や川または港内のみを航行する船舶
- 政令の定める総トン数30トン未満の漁船
保険者
政府ですが、実業務は地方社会保険事務局が担当しています。
給付される内容は、陸地で一般労働者が受給できる健康保険、厚生年金保険雇用保険、労働者災害補償保険の全てが対象となります。
各種共済組合管掌保険
対象者
国家公務員、地方公務員、警察職員、公立学校教職員、私立学校教職員およびその家族が対象です。保険者
各共済組合になります。自衛官等の療養の給付
対象者
自衛官、予備自衛官、自衛隊病院勤務者、防衛大学生、各駐屯部隊隊員などが被保険者の対象になり、その家族については、法別番号31の国家公務員共済組合(防衛庁共済組合)の被扶養者扱いとなります。保険者
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