レセプト業務と保険診療の仕組み
病院経営の収支に関わるレセプト業務とは何か
病院が患者に医療サービスを提供することで得られる全体の収入を医業収入といいます。
その中でも医療保険が適用される診療費のうち、患者が自己負担割合(全体の3割)に応じて支払う診察代は診療後に医療事務が会計窓口で請求し支払ってもらいます。
残りの診療費(7割)については、患者が加入している医療保険の保険者に1ヶ月ごとにかかった診療費を計算して診療報酬明細書(レセプト)を作成し請求を行います。
病院経営における医業収入の多くを占めている保険診療費の請求を行う作業を、診療報酬請求業務又は、レセプト業務と呼びます。
医療事務職員は、医師による診察や治療が終了すれば、診療報酬点数表を基にして患者のカルテに記載してある診療行為を、内容項目別に点数に換算して診療費の総額を算出します。
なお、診療報酬点数表は2年毎に見直し改定されます。
患者が加入している医療保険の自己負担割合分は会計窓口で請求しますが、それ以外は保険者へ月単位で診療報酬明細書(レセプト)を作成し診療費を請求します。
このレセプトの提出期限は、翌月10日までと決まっているので、月末から翌月10日までの10日間にレセプト業務が集中するため、医療事務にとっては毎月この期間が繁忙期となります。
現在では、多くの医療機関でレセプト・コンピュータ(レセコン)に診療内容を入力し、レセプト業務が実施されているため、レセプト点検作業がレセプト期間中の主な仕事になります。
レセプト作成がコンピュータで処理されていても、入力は人が行うためレセプト点検作業は重要で、医療事務に専門的知識が要求されるのは言うまでもありません。
患者別に毎月1か月単位でレセプト作成するため、その処理数は膨大で、スピーディーかつ正確に作業を行うために必要となる専門知識や実務経験は医療事務に欠かせない能力です。
診療報酬計算の基準とは
厚生労働省告示による診療報酬点数表に基づいて診療費の計算が行われています。
2年ごとに診療報酬点数表の改定が行われているので、診療項目と点数を丸暗記してもあまり意味がないので、必要な項目や個所を素早く検索し要領よく読み取れるようになることの方が大事です。
最近は、診療報酬計算をレセプトコンピュータで処理している医療機関が多くなり、カルテを元にコンピュータ入力して、診療費の算出を行えるようになっています。
保険診療の仕組み
診療報酬請求は、患者である被保険者、医療を提供する医療機関、患者が加入する医療保険の運営母体である保険者、病院から提出されるレセプトを審査し診療費報酬の支払いを行う審査支払機関の4者で、保険診療の仕組みが成り立っています。
患者(被保険者)
- 保険者へ保険料を支払い保険証を交付してもらう。
- 医療機関で診療を受け患者負担金を支払う。
医療機関(病院・診療所など)
- 患者を診察し、患者負担分の医療費を請求し徴収する。
- レセプト作成し審査支払機関へ診療報酬の請求を行い、審査OK後、診療報酬を受け取る。
審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、国民保険団体連合会)
- 医療機関から提出されたレセプト内容に過誤がないか審査し、問題がなければ保険者にレセプト送付し診療報酬の請求を行う。
- 保険者から請求金額が支払われれば、医療機関へ診療報酬を支払う。
保険者(国・市町村・組合)
- 患者から保険料を徴収し、保険証を発行する。
- 審査支払い委託先の審査支払機関からレセプト送付・診療報酬請求があれば、その請求費用の支払いを行う。
審査支払機関とは
医療機関がレセプトを作成した後の提出先は、保険者が委託している審査支払機関になり、レセプトを受け取った審査支払機関はレセプト内容に過誤がないかチェックを行います。
レセプト内容を審査して過誤がないと判断されれれば、委託元の保険者に対し審査支払機関が診療報酬の請求を行ない、保険者、審査支払機関、医療機関の順で診療報酬の支払いが行われます。
審査支払機関は、医療保険の種類によって次のように分かれています。
- 社会保険診療報酬支払基金(支払基金):
組合管掌健康保険、政府管掌健康保険、船員保険、共済組合など - 国民健康保険団体連合会(国保連):
国民健康保険
医療保険と診療費の種類
保険診療と自由診療の違いとは
医療機関での診療は、保険診療と自由診療に区分されます。
保険診療は、診療費の一部を患者が自己負担し、それ以外は国・市町村・組合などの保険者が負担します。
自由診療には、美容整形やインプラント治療などが該当し、診療費は全額患者が自己負担します。
公費負担医療では、難病や慣性疾患などが該当し、患者の診療費の一部を国が負担します。
保険診療費の内訳
病院からの保険診療費請求は、患者と保険者へ行われます。
日本に居住権がある住民は、医療保険への加入義務と医療サービスを受ける権利があり、この仕組みを国民皆保険といいます。
よって、診療費の大半は保険診療に基くものとなり、保険診療を受けた場合、患者と保険者が制度上で規定されている割合分の費用をそれぞれ負担するため、医療機関の診療費請求先は2ヶ所になります。
医療保険の種類
日本における医療保険制度は、次のように区分されています。
国民健康保険と健康保険は、医療保険の中でも加入者が圧倒的に多く、国民健康保険は自営業者が、健康保険には一般企業に従事している労働者などが加入し、他には共済組合、船員保険などがあります。
医療保険は患者の職業などにより数種類あり、患者の自己負担割合の金額もそれぞれ違います。
健康保険
- 一般被用者
- 政府管掌健康保険
- 組合管掌健康保険
- 中小規模事業所の会社員
- 健康保険組合がある企業の会社員
- 日雇労働者
- 臨時・季節的事業に従事している会社員
国民健康保険
- 自営業者
- 個人事業主
- 退職者と扶養家族
共済組合
- 国家公務員、地方公務員
- 私立学校の教職員
船員保険
- 船員
老人保険
- 75才以上の高齢者
- 65才以上で障害のある高齢者
公費負担制度
- 難病や慢性疾患を抱えている患者