医療事務 医事課の実務内容について
医事課は、医療機関の収支に関する業務を統括している部署で、医療事務業務の中でも最も専門性が問われる仕事です。
医事課の業務も広範囲に渡り、病院内の他部署とも緊密に連携しており、医療事務が行う医事課の主な業務には次のようなものがあります。
- 診療報酬算定業務
(レセプトの算定・作成・提出。) - 診療録(カルテ)の管理業務
(カルテの保管・管理を円滑に行うためには、医療専門職である医師、看護師などと密接に連携を取る必要がある。) - 会計業務
(一部負担金の請求・受取り、未収金回収などお金の管理は会計が行う。) - 医療・福祉に関する相談業務
以上の業務のなかで特に重要な「レセプト業務」について次から順に詳しく見ていきましょう。
診療報酬算定業務について
診療報酬明細書(レセプト)とは
医療機関が患者を診療した際にかかった医療費を保険者に対して請求しますが、この時の個人別請求書を診療報酬明細書(レセプト)といいます。
ちなみに保険者とは、健康保険事業の公的医療保険の運営団体のことですが、全国健康保険協会と健康保険組合の2つの団体が該当します。
レセプトには、診察・治療・投薬などに必要となった金額などが記入されます。
医療費の内訳は、患者さんが保険で決められた割合の自己負担金を自腹で支払い、その他は医療機関から審査支払機関へ診療報酬請求して審査OKであれば、患者が被保険者となっている保険者から診療報酬が支払われるという仕組みになっています。
レセプト作成について
レセプトの作成業務とは、1ヶ月単位で患者別の診療報酬を算出し、請求明細を作成する業務です。
診察を行う際に毎回作成される会計カードを集計して、患者個別に診療費を計算するので、正確性が求められる業務ですが、医療事務職の最も重要な仕事になります。
最近は多くの医療機関でレセプト・コンピューターが導入されていて自動集計による電子レセプトが標準化しているので、基本情報を入力するだけでデータ作成が可能です。
但し、全医療機関のレセコン導入率が100%となっているわけでなく、現在もレセプトを手書きで作成している医療機関もあります。
レセプトのトコンピュータ化について
以前レセプトの提出方法は、紙媒体か電子媒体で行われていましたが、厚生労働省の医療制度改革推進でインターネット経由のオンライン提出も2006年度以降可能となりました。
昔は手書き作業で能率も悪く、間違いも起こりやすい作業環境でしたが、このレセプトコンピューターの導入で業務合理化に繋がり、作業性の向上や記載ミスの低減など大きな改善効果が図れるようになってきました。
医療機関の業務方針や採用設備により、レセプトの作成や提出方法は異なりますが、作業方法としては次の4つのやり方があります。
- レセプトを手書きで作成し提出。
- レセプトをレセコンで作成し、印刷して提出。
- レセプトをレセコンで作成し、電子媒体で提出。
- レセプトをレセコンで作成し、オンラインでデータ送信して提出。
レセプト点検について
保険請求業務で医療事務にとって最も注意すべきことは、レセプトの差し戻し(返戻)です。
レセプトの差し戻し(返戻)があると、保険者から病院に請求した医療費が支払われず、レセプトを再提出して審査合格した後、医療機関に支払われることになるので、病院の医業経営に直接影響することになります。
ですから、医療事務職員は、レセプトの点検を迅速・的確に実施するために慎重さや正確性が求められます。
レセプトの返戻される原因は、保険証の確認を怠ったり、資格喪失・記号・番号など基本情報の記入誤り、などが大半を占めます。
レセプトの点検作業が終了すれば、次に医師に傷病名と診療内容が合致しているか、記入忘れはないかなどを確認してもらいます。
レセプト作業だけでなく人が行う仕事では、ミスは少なからず発生しますが、できる限り最小限に押さえたいものです。
レセプト作成・提出の流れと実務具体例
レセプト作成・提出の流れ
- レセプト作成
- 手書きの場合
カルテを見ながらレセプト作成 - レセコン利用の場合
コンピューター入力、レセプト作成し出力
- 手書きの場合
- レセプト点検
- 医師にチェック依頼
- 審査支払機関別に仕分け
- 審査支払機関の提出ルールに準じてファイリング
- 各審査支払機関に提出
大規模病院における一ヶ月のレセプト業務の流れ
- 当月
1日〜末日
レセコンにその都度、診療報酬を入力していく - 翌月
1日〜5日
レセプト作成、点検
10日
レセプト提出期限
診療報酬請求書の作成・提出について
レセプトチェックが完了すると、当月分の診療報酬請求書を国民健康保険と社会保険に分類して、それぞれ作成します。
次に、この診療報酬請求書と先に作成した診療報酬明細書とを一緒にして審査支払機関に提出します。
ちなみに、審査支払機関には、会社勤めの方が加入している場合は社会保険診療報酬支払基金、商売など個人事業主などが加入している場合は国民健康保険団体連合会が審査を行います。
その後、該当する機関で請求内容について審査が行われ、問題がなければ診療報酬が医療機関に支払われるようになっています。
未収金リストの作成・督促・回収について
医療機関などの医業経営による収入は、大半が保険診療によるもので、患者が一部負担金として自己負担するお金と、診療報酬として保険者から振り込まれるお金です。
但し、時には患者側の事情により自己負担分の診療代を支払わない方もおり、未収金が発生ることも少なくありません。
事実、未収金ゼロという医療機関は、現状ではほとんどないと思います。
この場合、医業経営に悪影響を及ばさないようにするため、未収金一覧表を作成し、患者に対して支払うように通告し督促・回収を行うことも医療事務の業務になります。
入院施設がある病院の医事課とは
入院施設を備えた医療機関では、通常、外来診療よりも入院診療による収入が主な収入源になります。
このような規模の病院の医事課は、病院経営をサポートする大切なポジションにあり、医療事務も外来とは異なり入院診療に関する専門知識も求められます。
当然、業務内容も複雑で多岐に渡り、一部負担金の支払いについても外来診療のように1回きりではなく、定期的に請求することもあり、入院診療ならではの業務になります。
なので、入院と外来それぞれに医事課を設けて分業で業務を行っている医療機関がほとんどです。