医療事務は、生活保護を受けている患者が受診した場合も適切に診療報酬請求事務を行えるようにしておく必要があります。
このページでは生活保護法における医療扶助とはどのような制度・仕組みになっているのか説明していきます。
生活保護法とはどのような法律・制度なのか?
文化的でなおかつ健康を維持できる最低限度の日常生活を送ることができるように、国が国民に保障している制度が生活保護法といわれるものです。
この制度は憲法25条に規定されており、国民にとっては生活保障の最後の砦です。
国民が人生において様々な不幸や傷病等の災難に襲われ日常生活を送ることが自力で難しくなった人に対し、最低限度の生活が維持できるよう必要な法的保護を施すと共に、当人が自力で日常生活を継続できるよう援助していくことを目的として制定された法律が生活保護法という制度です。
生活保護の扶助には、以下のような種類が有ります。
- 生活扶助:金銭給付で行われ1種類又は2種類以上の扶助が併用支給
- 医療扶助:現物給付で行われる単独支給
- 介護扶助:現物給付で行われる単独支給
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 生業扶助
- 出産扶助
- 葬祭扶助
具体的な支給内容については、要保護者が最低限の日常生活を送ることができるか、必要に応じた限度内の範囲で金額や扶助内容が決定されます。
生活保護は、年齢別生活基準額などの一定基準を基に計算された1か月分の世帯における最低生活費と保護の対象となっている世帯収入額(収入認定額)とを比較し、対象者の現状の収入のみでは、最低限度の生活を充足ができないと判断された場合に支給されます。
生活保護対象者の世帯収入額が最低生活費以下の場合は、その差額が生活扶助として支給が行われます。
生活保護法に関する医療扶助の申請方法とは?
生活保護法に規定されている医療扶助については、申請保護の原則により本人が生活保護を申請することで適用を受けることができる制度になっています。
医療扶助を受けたい場合は、福祉事務所長へ患者本人か家族か保護申請する必要があります。
例外措置として急迫した状況に患者本人が置かれているケースでは、職務権限の遂行による保護が行われることもあります。
医療扶助を行う場合については、次の2つのケースがあります。
- 医療要否意見書による実施
生活保護法の医療扶助の申請を行う場合に必要となる指定医療機関に従事する医師が作成する患者の主要な病状や診療期間などが記された意見書類による医療扶助の実施 - 検診命令による実施
指定医療機関に従事する医師が作成した検診書を判断材料として福祉事務所の職務権限の遂行による医療扶助の実施
福祉事務所は患者から医療扶助の申請が提出された場合、医療扶助を実施する必要性の有無を的確に判定するため、申請者に対し次のような意見書の発行を行います。
その後提出された指定医療機関の医師などの意見に基づいて医療を施すことが必要であるかどうかの確認を行います。
- 医療要否意見書とは
患者の診療期間や主な病状などが記載された意見書類で、指定医療機関に従事する医師が作成する資料、生活保護法の医療扶助の申請を実施する際に必要となるもの。 - 結核入院要否意見書とは
結核による治療期間や入院要否などが記載された意見書類で、指定医療機関に従事する医師が作成する資料、生活保護法の医療扶助を申請する際に結核に罹患した患者が必要となるもの。 - 精神障害入院要否意見書とは
精神障害による入院期間や入院要否などが記載された意見書類で、指定医療機関に従事する医師が作成する資料、生活保護法の医療扶助を申請する際に精神障害者が必要となるもの。
但し、現状において他の保護制度より当人が受給中であり、医療を施すことが必要であると判断された場合は、医療要否意見書の発行は行われず、医療券は保護変更申請書に基づき発行されることになります。
指定医療機関の医師より提出された要否意見書に基づき福祉事務所は適切に検討を行い、医療が必要かそうでないかの適用確認を行った後に、医療費を除外した最低生活費の計算と対象者の世帯収入の認定を実施し、医師により要否意見書に記入されている1か月相当の医療費概算金額である所要医療費概算月額と計算した金額との比較を行い、医療扶助の有無を判断します。
また、医療費の3割自己負担となっている国民健康保険の被保険者資格については、生活保護の受給が決定した場合、決定日当日より資格喪失となるため、生活保護法と国民健康保険との併用はできません。