身体障害者に対する自立支援と医療制度|医療事務の知識

身体障害者福祉法とは

身体障害者の日常・社会における生活を総合的に支援することを目的として身体障害者福祉法が定められました。

主な支援内容は次の通りです。

  1. 身体障害者の自立支援
  2. 社会経済活動への参加促進
  3. 身体障害者への援助・保護
  4. 身体障害者の生活安定支援

また、身体障害者への援助・支援事業には、主に次のようなものがあります。

  1. 自立支援給付
  2. 更正援助
  3. 障害者福祉サービス

身体障害者福祉法は、2005年に制定、2006年に施行された障害者自立支援法(正規名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)が定められた際に法改正が行われました。

身体障害者の範囲は

先天的・後天的な原因により、身体機能の一部に障害を抱えている状態のことを身体障害といいます。

身体障害者福祉法で規定された身体障害者の範囲は、下表に記すような身体障害を生じている18歳以上のもので、身体障害者手帳を都道府県知事より交付されたものが対象になります。

身体障害の内容と主項目
上表情報引用元:
東京都福祉保健局 東京都心身障害者福祉センター「身体障害者の範囲について(PDF)」より

身体障害者手帳を交付してもらうには、住民票がある地域管轄の福祉事務所を通し、都道府県知事宛に医師の診断書(都道府県知事指定)を添付して交付申請手続きを行います。

交付申請後は審査が行われ、障害の程度が身体障害者程度等級表(1級〜7級区分)に該当すれば、身体障害者手帳の交付が行われます。

身体障害者程度等級表とは、次の身体障害内容ごとに障害の程度を1〜7級に等級区分された一覧表をいいます。

  1. 視覚障害
  2. 聴覚・平衡機能障害
  3. 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
  4. 肢体不自由
  5. 心臓、じん臓又は呼吸器の機能障害

身体障害者への公的支援制度内容

身体障害者福祉法の第四条の二で定めれれている事業内容は次の通りです。

  1. 身体障害者生活訓練等事業
  2. 手話通訳事業
  3. 介助犬訓練事業

身体障害者福祉法の第五条に定められた施設には、次のようなものがあります。

  1. 身体障害者社会参加支援施設
    (身体障害者福祉センター、補装具製作施設、盲導犬訓練施設及び視聴覚障害者情報提供施設)
  2. 医療保険施設
    (地域保健法に基づく保健所、医療法に規定された病院や診療所)

身体障害者福祉法の第四章には費用負担について規定されており、身体障害者の更生援護に関する費用は市町村・都道府県・国がそれぞれの割合で負担するしくみになっています。

市町村の支弁
  • 身体障害者福祉司の設置・運営に要する費用
  • 委託に要する費用
  • 行政措置に要する費用
  • 身体障害者社会参加支援施設・養成施設の設置・運営に要する費用
都道府県の支弁
  • 身体障害者福祉司の設置・運営に要する費用
  • 身体障害者更生相談所の設置・運営に要する費用
  • 委託に要する費用
  • 行政措置に要する費用
  • 身体障害者社会参加支援施設・養成施設の設置・運営に要する費用
国の支弁
  • 障害者支援施設等に入所した身体障害者の入所後に要する費用

障害者自立支援法は、2006年(平成18年4月)から施行されましたが、障害者を家族に持つ低所得世帯であっても1割の自己負担が生じていたため負担増となり、障害者側だけでなく事業者側からも不評な制度であったため訴訟問題にまで発展し大きな問題となりました。

そこで、2013年4月にこれらの問題点を改定した障害者総合支援法が施行され現在に至っています。

このページでは、障害者総合支援法の前身となった障害者自立支援法について振り返って見ます。

障害者自立支援法とは

障害者自立支援法は、2006年4月より施行された法律です。

それ以前は、「身体障害」「知的障害」「精神障害」と障害種別ごとに異なる法律に基づいて、受けられるサービスが区分されていました。

障害者自立支援法は、障害種別ごとにバラバラであった福祉サービス・公費負担医療・補装具費用、給付の対象者・内容・手続き、地域生活支援事業、サービス整備のための計画作成、費用負担方法などについてのサービス内容を共通化し、全員で利用者負担を支えるシステムに改定し地域での障害者が自立できるように生活支援を行うための仕組みを規定した法律です。

障害者自立支援法の要点は次の5つです。

  1. 利用者主体のサービス形態
  2. サービス提供主体の共通化
  3. 支給決定プロセスの明確化
  4. 就労移行・継続支援の強化
  5. 安定した財源確保

障害者自立支援法に基づく自立支援システムとは

自立支援給付と地域生活支援事業の2本柱で運用され、自立支援給付では、次のような支給が行われます。

  1. 介護給付費
  2. 特例介護給付費
  3. 訓練等給付費
  4. 特例訓練等給付費
  5. サービス利用計画作成費
  6. 高額障害福祉サービス費
  7. 特定障害者特別給付費
  8. 特例特定障害者特別給付費
  9. 自立支援医療費
  10. 療養介護医療費
  11. 基準該当療養介護医療費
  12. 補装具費

自立支援医療費とは

  1. 自立支援医療費の支給申請

    障害者本人又は障害児を抱える保護者が自立支援医療費の支給を希望する場合には、市町村又は都道府県より支給認定を受ける必要が有ります。

  2. 自立支援医療費の支給認定

    障害者が抱える心身の障害状態から判断すれば自立支援医療を受けるべきであり、障害者又は世帯家族の所得及び治療状況、その他の事情を考え合わせると政令で規定された基準をクリアする場合、市町村は自立支援医療の種別毎に支給認定を決定します。

  3. 自立支援医療費の支給

    支給認定された障害者又は障害児を抱える保護者が、自立支援を指定自立支援医療機関で受けた場合、市町村が自立支援医療費を支給することとなります。

指定自立支援医療機関の指定について

病院・診療所・薬局などの医療機関からの申請に基づき、自立支援医療の種別ごとに指定自立支援医療機関の指定が行われます。

また、支援内容については適切で質の良い自立支援医療を指定自立支援医療機関は実施することが求められています。

療養介護医療費とは

指定障害福祉サービス事業者において、療養介護支給決定を受けた障害者が療養介護医療を受けた際、市町村は療養介護医療で障害者が支払った総費用を療養介護医療費として支給を行います。

基準該当療養介護医療費とは

基準該当施設において、療養介護支給決定を受けた障害者が療養介護医療を受けた際、市町村は基準該当療養介護医療費の支給を行います。

補装具費とは

障害者が抱える障害の程度や状況から判断して、補装具の購入・修理を要すると認定できる際には、補装具の購入・修理として障害者が支払った総費用について、市町村は補装具費の支給を行います。

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